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団体交渉の歴史と意義、その機能

―実践的に考える職場と労働法

個人加入型の地域合同労組にも団体交渉権がある

団体交渉の歴史と意義、その機能

 団体交渉は様々な意義や機能がありますが、もともとは「労働力の集団的取引」という形で始まりました。個々の労働者の労働条件について使用者と個々で取引するのではなくて、多数の労働者が団結して代表者を選出し、その代表者を通じて集合的に取り引きを行うというものです。

 こうした集合的・統一的な取り引きを行うことによって労働者は、最終的には労働力の集団的な売り止め(ストライキ)を行うことで初めて大きな対抗力を持つことになったのです。

 日本の労働組合法で団体交渉に関する規定はどうなっているか? 関係する条文を総合すると「団体交渉とは、労働者が団結して労働組合を結成し、自ら代表者を選び、労働条件をはじめとする使用者と労働者の関係を規律する労働協約を締結するために、使用者または使用者団体と交渉する行為」となります。

 労働組合法は、こうした団体交渉の手続きの助成を目的の一つとして掲げており、団体交渉を中心とした集団的労使関係のルールや手続きを設定することも団体交渉の機能として想定しています。

 米国では、個々の労働者の労働関係上の権利主張を処理するために設けられている手続きとして「苦情処理手続き」という制度があり、労使が選任する仲裁員によって解決する仕組みがありますが、日本では米国ほどは発達しておらず、個々の組合員の権利問題等についても団体交渉で扱われています。

 地域合同労組やユニオンが、解雇や雇い止め問題の解決を団体交渉によって行うことも当然のこととして定着し、こうした場合について裁判例や労働委員会も、原則的には使用者側は団体交渉義務を負うと判断しています。

 憲法28条は、団体交渉について刑事免責、民事免責、不利益取り扱いからの保護を規定しています。労働組合法は、労働委員会の救済命令によって担保するかたちで使用者に団体交渉義務を課しています。

処罰された時代も

 歴史的には労働者が集団的な団結力を背景として労働条件やその他の事項の改変を求める行為は「脅迫罪」などの名目で処罰の対象とされました。やがて、こうした抑圧は撤廃され、積極的に法的保護を与えることとなりました。

 米国では、特定の職場で団体交渉の権利を持つのは関係労働者の過半数の支持が必要です(排他的交渉代表制度)。日本では、複数組合が交渉権を持つことを認め、なおかつ人数要件もないので、個人加入型の合同労組・ユニオンのも団体交渉権があります。

 フランスでは、主要5組合に全国的な「代表性」を認め、政府が召集する労使合同委員会で産業別の協約を交渉する仕組みとなっています。組織率としては1割以下の労働組合の締結する産業別労働協約が9割以上の労働者に適用されます。

団体交渉の諸類型

 団体交渉の形態としては、典型的なものとしては「産業別交渉」「企業別交渉」「職場交渉」があります。

 産業別交渉はドイツやフランスでは伝統的・一般的ですが、日本では、海員組合と船主団体間との交渉など、全港湾、音楽家ユニオン、UAゼンセン(繊維部門)など少数派にとどまります。

 ある企業の従業員の労働条件などについて、それらの従業員を組織している労働組合が個々の使用者との間で行う団体交渉が企業別交渉です。日本はもっとも多いタイプです。職場の諸問題について職場管理者と行う交渉が職場交渉で、日本では歴史的に職場闘争として意識的に推進されてきました。

 中間的形態としては、企業別交渉へ上部団体が参加する方式、企業別組合とその上部団体とか共同で使用者と交渉する形態、あるいは春闘のように中央組織のスケジュールに合わせて一斉に各企業で企業別交渉を行う方式などがあります。

労使協議制とは

 日本では、団体交渉以外の交渉方式として「労使協議制」があります。厚生労働省の調査では、労働組合がある事業所の8割以上で労使協議機関が設置されています。①団体交渉に先立ち情報開示・意向打診などを行う事前協議型、②団交事項を労使協議で行う団交代替型、③団交事項とは区別された形で経営生産事項を協議する経営参加型、④協約上の人事協議事項に基づき行われる人事の事前協議制――などがあります。

 これらは、労使間の合意(協定・覚書・了解など)に基づいて設置され、争議行為を予定しないものです。多くの企業別労組とって中心的形態になっています。法的には、使用者の誠実交渉義務が生ずる場合もありますが、「団体交渉の前段手続きにとどめる」「争議行為を行わない」などの合意にも拘束されることになります。協約であれば、協約上の義務は生じます。

 

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