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刑事・民事免責、不当労働行為救済

などを規定

労働組合法を読む、知る、考える

労働組合法を精読した人は意外に少ないと思います。何回かに分けて労働組合法について考えます。
 労働3法の一つである労働組合法は戦後直後の45年12月に制定され、実は日本国憲法よりも先にできた法律です。
 労働組合に関する法律政策は歴史的には次の4段階を経てきたと労働法の教科書ではまとめられています。
 第1期が禁圧期です。資本主義初期には、「取引の自由」「営業の自由」「労働の自由」が原則として強調され、共謀罪(団結禁止法)によって労働組合の結成や活動は、取引・営業の自由を阻害するものとして禁止されました。
 続く第2期が法認(放任)期です。やがて労働組合の存在は法の世界でも公認されます。当初は結成が合法化されただけでしたが、やがて「刑事免責」「民事免責」が規定されるようになりました。
 さらに世界大恐慌後の米ニューディール政策の一環としてワグナー法が制定されます。労働組合の結成や活動を承認するのみならず、使用者の干渉や妨害からの保護を通じて労働組合の結成・運営を保護・助成する政策が取られるようになります(助成期)。
 ワグナー法は、労働者の団結し、団体交渉し、団体行動する権利を宣言し、これらの権利を侵害する使用者の行為を不当労働行為として禁止、専門的な行政委員会が救済命令を発するという内容です。日本の労組法も、ワグナー法の影響を受けています。
 しかし米国では戦後直後の47年にタフト・ハートレー法の制定によってワグナー法は大きく制限。直接の当事者以外へのストの禁止、大規模ストへの大統領の介入などを定めました。英国でも80年代のサッチャー政権が労働組合の規制立法を強行するなど、規制傾向が強まっています(現代的規制)。

  刑事・民事免責

 労働組合法は比較的短いので一読をお勧めします。
 同法は、「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること」を根本目的として定め、続いて次のように規定。
 労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護
 「並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成

 つまり労使対等の理念に基づいて団体交渉を行うことを保護・助成し、そのために労働組合の結成や運営、団体行動を行うことを擁護する内容になっています。これを実現するために同法は、刑事免責(1条2項)および民事免責(8条)を明文化しています。
 さらに法人格の付与(11条)や、不当労働行為救済制度(7条、27条~)、労働協約の規範的効力(労働契約や就業規則よりも優先される)を規定し、労働組合に対して積極的な保護を与えています。

労働組合の要件

労働組合法が規定する諸種の法的保護を受ける労働組合の法的要件について労働組合法は「この法律で『労働組合』とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう」と規定しています。
 さらに但書において「監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの」「主として政治運動又は社会運動を目的とするもの」に該当するものはこの限りではないとして労働組合から除外しています。
 不当労働行為の救済命令を求める場合には、労働組合は上記の規定に適合することを示す必要があります。

  労組法上の労働者

 労組法において労働組合として認められるには、まず労働者が主体となって組織するものである必要があります。「労働者」については「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と規定しています。これは労組法独自の定義で労働基準法や労働契約法よりも広い概念です。
 例えばプロ野球選手も、労組法では労働者の定義に入ります。また現在は賃金を得ていない失業者についても労働者に該当します。
 労働契約以外の契約形態によって労務供給を行う者の労働者性は近年特に外注化・非正規化の拡大に伴って大きな焦点となっています。
 住宅設備機器の修理補修の業務を委託された技術者(INAXメンテナンス事件)、音響機器の修理補修の業務を委託された個人代行店(ビクター事件)などが有名ですが、最高裁判決で労働者性を認められています。
 コンビニ加盟店ユニオンによるセブンイレブンの団交拒否をめぐっては19年3月に中労委が労組法上の労働者に該当しないと判断、東京地裁で現在争われています。