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【20条裁判】非正規雇用撤廃に向けて

あらゆる闘い模索しよう

 10月、労働契約法20条をめぐり3つの最高裁判決が出た。少し私見を述べたい。
 そもそも労契法20条は、90年代後半から00年代半ばにかけて非正規労働者の増加が社会問題化し、小泉政権を経て08年のリーマンショック後の不況で非正規の解雇(雇い止め)が相次ぎ、年末の年越し派遣村などがインパクトとなり法制化の動きが出た。
 折しも自民党政権が倒れ、民主党政権が成立し、労働契約法の中に①無期転換5年ルール(新18条)、②解雇権乱用法理の類推適用(雇い止め法理=新19条)、そして③均衡・均等ルール(新20条)の3つの規定が労働契約法に加えられた。
 労契法の改定は、リーマンショックで文字通り路頭に迷うこととなった非正規労働者の現実、そして(非正規労働者の)闘いの潜在的脅威に対応したものである。同時に、無期転換を回避する5年未満の雇止めが広がり、あるいは限定社員化のテコとなるなど雇用破壊の反動も伴った。
 他方で、こうした労契法の規定をも活用した非正規労働者の闘いが法廷でも展開されることとなった。その数年越しの法廷闘争の一つの結論が10月の3つの裁判だ。
 判決は、退職金や賞与については「不合理な格差とまでは言えない」との逆転反動判決だった。他方、郵政判決は諸手当の格差は不合理として原告の主張を認めた。
 特に前者については非正規労働者の現実を無視し、格差是正を求める叫びを無視・圧殺することを狙った大反動である。他方で諸手当を求めた郵政裁判の判決については当然の判断であり郵政職場における闘いと団結形成の可能性をつかんだ。
 この裁判は、法規制に依拠する闘いではなく、非正規をなくす闘いとして位置付けることが重要だ。反動判決を撤回弾劾し、団結して闘う条件を見出し、矛盾を突き、あきらめずに闘いを継続・発展させることが重要だ。

 

均衡・均等のインチキ

 そもそも労契法20条の「均等・均衡ルール」という考え方自体が、職務内容や配転の有無、人材育成の仕組み、経験や能力、貢献度など多様な事情を考慮(!)して、正規から非正規の中間にグラデーションのように多様かつ裁量的な労働条件を肯定するものだ。労働条件の個別化であり、なおかつ極めて差別的かつ分断的に運用されている。
 また均衡・均等について不合理か否かが判断基準となっており、正規と非正規の労働条件を合理的に設定せよではなくて不合理と言えるか否かを問うものとなっている。これはニュアンスがだいぶ違う。結局、企業側の恣意的運用を許容するものとなる。
 さらに労働基準法ではなく労働契約法の規定であり、非正規労働者が裁判等で問題にしない限り是正されない。また提起された労働条件が不合理か否かを判断するのは裁判官という構図になる。
 全体として非正規労働者の許しがたい現実、これに対する怒りと闘いがあって法律制定や裁判もあり、また反動もある。裁判所が救済主義的に不合理性を判断するものでもない。法廷闘争のみならず労働者のあらゆる闘いを叩きつけ、労働者が団結して闘う条件を見出していくことが肝心ではないか。(組合員T)