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労働基準法が適用される労働者とは?

· 時事問題

近年、トラック持ち込み運転手など労働者と自営業者のグレーゾーンに位置する働き方が問題になっています。安倍政権も非雇用型の働き方を推進しています。労働法の規制や社会保険などの使用者責任を回避するもので非常に重大な問題です。

労働基準法が適用される労働者について、労基法9条は「使用される者で賃金を支払われる者をいう」と定めています。その「賃金」については労基法11条は「労働の対償として支払われるすべてのものをいう」と定めています。

労働者性をめぐっては裁判も数多く行われています。

裁判例は、

 ① 業務諾否の自由の有無
 ② 業務遂行における使用者の指示の程度
 ③ 時間的・場所的拘束性
 ④ 専属性の有無
 ⑤ 機械・器機の負担関係
 ⑥ 報酬の支払い方法
 ⑦ 報酬額
 ⑧ 就業規則の適用の有無
 ⑨ 社会保険の適用の有無
 ⑩ 税法上の取り扱い

――などから労働者か否かを判断しています。

①②③など使用者の指揮命令の下にあるかどうか(使用従属性)だけでなく、④⑤⑥⑦などの事業者性の有無、あるいは⑧⑨なども合わせて総合的に労土砂性を判断しています。

トラック持ち込み運転手をめぐる横浜南労基署事件(旭紙業)事件では、会社の指示は運送業務に必要な指示にとどまり、時間的・場所的拘束もゆるいとして労働者性を否定しました。他方、運転手がトラックを保有し、経費も自ら負担していたとして事業者性を肯定しました。

しかし、事実上、運転手は企業に専属していたことを考えると、契約の形式を操作することで企業の使用者責任の回避を容易に認めるものであり、大きな問題があります。

また「労働」「安全」など様々な観点から非常に問題があります。

個人事業主として運送業務に従事する働き方は、重大事故のリスクを高めると言わざるをえません。

事故時の対処や責任という点で、労働者の立場からも、あるいは行政的な指導などを考えても、個人事業主という形態で運送業務が行われることは重大な問題をはらんでいます。

最近、ウーバーなる配車(ライドシェア)サービスが世間を席巻しています。旅客を運ぶ業務についても雇用によらない働き方が拡大していく可能性が高いことを考えると、今回のテーマはさらに切実かつ重大となると思います。