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コロナ禍で焦点あたる雇用保険

実践的に考える職場と労働法

●失業給付を大幅に絞ったため巨額の積立金残高
 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、雇用調整助成金など雇用保険制度が焦点になっている。今回は雇用保険の仕組みを考えたい。
 企業倒産や解雇その他の失業時の所得補償などを行うのが雇用保険だ。再就職できるまでの所得補償という考え方で公共職業安定所(ハローワーク)で職業紹介、斡旋と一体的に行われている。
 資本主義初期の頃は、働く能力があるのに働かないのは本人の怠惰・やる気がないせいで本人の責任とされていた。しかし1929年の世界大恐慌による大量失業などの経験の中で、失業は資本制経済では景気の変動に伴って社会的に生み出されるとの認識が一般化した。
 世界初の失業保険制度は英国で1911年に始まり、ドイツでは1927年に失業保険法が制定された。日本は戦後の1947年に初めて制度化された。
 

●週20時間以上適用
 雇用保険の被保険者は、適用事業所に雇われている労働者で、原則として労働者を雇っている事業所はすべて適用事業所となる。適用除外の事業所は個人経営の農林水産業で雇用している労働者が常時5人未満の場合だけだ。
 雇用保険の対象となる労働者は、所定労働時間が週20時間以上で、引き続き31日以上雇用されることが見込まれる場合はもれなく被保険者となる。健康保険や厚生年金などよりも適用範囲は広く、学生バイトなどが適用対象となる場合は多い。公務員は原則として適用除外だが会計年度任用職員など非正規公務員は任用条件によって雇用保険に加入しているケースもある。
 保険料は一般の事業で賃金の0.9%(建設は1.2%、農林1.1%)。うち0.6%は求職者給付などの保険給付の財源に充てられ、労使が折半負担するので労働者の負担分は0.3%だ。残る0.3%は雇用保険2事業と呼ばれる雇用安定事業・能力開発事業に充てられ、全額を事業主が負担する。雇用調整助成金の財源はこれだ。
 雇用保険には一定の国庫負担が規定され、求職者給付の4分の1、雇用継続給付の8分の1が国庫負担となるのが基本だが、この間、暫定措置として負担割合はその10%とされている。
 雇用保険の積立金は、一時期は6兆円を超えており2019年現在でも4兆円以上ある。かつてはバブル崩壊後の大リストラによって給付が激増し、一時は積立金残高が4千億円まで減ったことがあった。失業の激増に対応したのだから支出が増えるのは当然なのだが、厚生労働省は手を尽くして給付を絞ったのだ。昨年問題になった「毎月勤労統計」も実はこのことに関係ある。
 特に07年に大改悪が行われた。それまで退職理由に関係なく誰でも6か月以上雇用保険に加入していれば退職後に失業給付が受給できた。しかし、07年以降、6か月加入で受給できるのは会社都合退職のみで、自己都合退職は12カ月以上の加入期間が必要となった。
 その直後にリーマンショックが襲った。派遣切りを受けた労働者の多くが失業給付を受けられない事態になった。リーマンショックによる失業者急増にも関わらず積立金は増えていったのである。
 

●最大賃金8割給付
 保険給付は大きく分けて4種類ある。
 第一が「求職者給付」で、雇用保険の中心的な給付だ。被保険者が失業したときに、その失業の理由や年齢、被保険者期間の長さに応じて一定の期間、金銭給付がなされる。
 基本手当は、離職後にハローワークに行って求職の申し込みをしてから7日間の待期期間後に給付される。離職後1年で打ち切りとなる。基本手当の額は、失業前の賃金日額の5~8割で、賃金が低かった人ほど給付率が高い。給付日数は、会社都合退職は期間が長く、自己都合は短い。
 第二が早期再就職者への給付である「就職促進給付」、第三に自主的教育訓練受講者への「教育訓練給」がある。
 第四の「雇用継続給付」は、失業後の給付ではなく、就労を継続できるように図る「高齢者雇用継続給付」「育児休業給付」「介護休業給付」の3つがある。高年齢雇用継続給付は60~65歳の労働者の賃金が75%未満に下がったときに支給される。
 雇用保険にはこのほかに雇用保険2事業と呼ばれる「雇用安定事業」「能力開発事業」がある。事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的に休業、教育訓練または出向を行って労働者の雇用の維持を図る場合に、休業手当や賃金の一部を助成するもの。
 近年「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への転換」と称して否定的に扱われてきたが、3・11大震災や新型コロナウイルス感染拡大に伴い一気にスポットライトを当てられることになった。
 

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