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映画紹介『ぽっぽや(鉄道員)』

· 労働映画
鉄道員(ぽっぽや)

言わずと知れた高倉健の主演で99年に映画化。健さん演ずる佐藤乙松は、北海道の幌舞線の終着駅の1人駅長で間もなく定年退職。北海道有数の炭鉱町でかつては石炭を満載したD51が往還したが最後の山も採炭をやめ、ローカル線である幌舞線は乙末の定年退職と共に廃線が決まる。


〝ぽっぽや〟の呼称は、「汽車ぽっぽ」のぽっぽで本来は揶揄的に使う言葉だと思うのだが、使命感を持って鉄道一筋で生きてきた労働者が特別な感慨や誇りを込めてやや自嘲的にそう呼ぶのだと思う(たぶん)。


やはり不器用だが職務に忠実な乙松は、幼い娘を亡くした日も、妻が亡くなった日もずっと駅に立ち続けてきた。親友の杉浦(小林稔侍)は、定年を間近に迎え官舎からの立ち退きが迫る乙末にリゾートホテルへの再就職を勧めるが、乙松は断る。鉄道以外の仕事をする自分の姿が想像できないのだ。


そんな雪の正月、彼のもとにランドセルの少女が現れ人形を忘れて帰る。少女の来訪は、乙松に訪れた奇蹟の始まりだった……翌朝、すっかり冷たくなった乙松の遺体が駅のホームで発見される。健さん版『マッチ売りの少女』です。黙々と駅の仕事をこなす健さんの配役と演技は見事です。


青年組合員時代の回想で順法闘争で集団就職のための特別列車だけは運行しようと論争になるシーンや炭鉱で働く臨時鉱夫の吉岡(志村けん)がスト破りをして食堂でケンカになる場面などが印象に残る。乙松と吉岡は仲良くなるのだが吉岡は炭鉱事故で息子を残して帰らぬ人に。


撮影に使われた根室線幾寅駅は台風被害で現在不通に。JR北海道の提案でこのまま廃線の公算が高いと報道されている。